コラム:たとう紙について


こんにちは!
毎月一度のコラムでございます。
今回は、ご購入されたお振袖やお着物、あるいはクリーニングで返却する際に包む、「たとう紙」について述べていきたいと思います!
非常にニッチすぎるコラムですので、おそらく多くの方が読み飛ばすかと思いますけれども(^_^;)
まあ、そんなのは関係ないです。
着物をいかに長持ちさせられるのか?という科学的な根拠を追求するのが、私の趣味なので(^^♪
それでは、いざ!たとう紙の世界へ・・・
1. たとう紙とは?
-たとう紙の基本的な説明
はて、たとう紙って?初めて聞く方もおられることでしょう。
たとう紙とは、簡単に言うと「着物をつつんで、保管する紙」のことです。

私の影がうつっておりますが、気にしないで下さい!
当店でたとう紙をご購入される際は、このたとう紙をお渡ししております。
左の短いのが帯用、右がお着物用とされております。
このたとう紙に着物を包んで基本的に保管するのですが・・・
おそらく多くの方は、こう思うのではないでしょうか。
洋服はビニールで包んだりしているのに
「なんで紙に包むのだ??(?_?)」
着物もビニールで包んじゃえばいいじゃん!と思われるかもしれません。
そういうわけで、まずはたとう紙の歴史的な背景について、探っていくことにしましょう。
2. たとう紙の歴史
起源や歴史的背景
前回
という記事を執筆した際、そこに対してまったく科学の目が当たっておらず、資料探しに難航しておりましたが
なんと今回、たとう紙という超ニッチなものに、ただお一人、歴史の分野から研究された方がおります。本当にありがたいことです。
それは岐阜女子大学で、徳山孝子さんが書かれた研究論文「たとう紙(文庫紙)の図像学的考察」
というものです。この題名が意味することは、昔に書かれた絵から、たとう紙がどんなふうに使われていたかを考える、という意味です。
この論文をようやくしますと
・平安時代以前は「畳紙」とよばれ、歌や文章を書く為の紙であった
・江戸時代中期までは、風呂敷で着物を包む絵が見られる
・江戸時代後期あたりから、反物(生地を巻いてあるもの)に紙で包む絵が見られ始めた

これが反物です
このことから、徳山孝子さんはこのように結論づけております。
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「江戸時代の呉服屋は、反物(生地)を売ることだけが仕事であったが
現在の呉服屋は、着物を仕立てて渡すところまで呉服屋の仕事である。
そこで、反物を『紙でくるむ習慣』から『文庫紙(たとう紙)で包む習慣』へと変わったと考えられる」
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3. 現代のたとう紙の使い方
さて、現代ではどのように使われているかというと
たいていの呉服屋さんは「着物を保管するため」
とおっしゃいます。はて、たとう紙がどんな役割を果たすのか?
きものとさんがわかりやすくまとめておられましたので、引用させていただきます。
1.着物を除湿してカビの発生を防ぐ
2.着物をホコリから守る
3.着物にシワがつくことを防ぐ
4.タンスから出し入れしやすくする
きものとさんだけでなく、たいていの呉服屋さんは、このような説明をいたします。
しかし、ここで私はある疑問が浮かびます。
「型崩れやシワがつくことを防ぐのは、ものすごいわかる。
なぜなら着物同士のスレを回避できるし
紙につつむ事である程度形を保って保管できるものだから。
ホコリからの防止もわかる。
けど・・・着物についている湿気を本当に吸うのか!?」
この疑問を解消する研究は
さすがにありませんでした\(^o^)/
科学者の皆さまも、さすがに「たとう紙」を研究するなんて、思いもつかないことでしょう。
着物クリーニング・お仕立て専門のお店も、このようなブログを書いております
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長期保管時にたとう紙が必要かどうか?と問われれば当店では「・・・」と、答えに窮してしまいます。
着物を愉しむという点では「昔ながらの取り扱い方法・保管方法を楽しむ」のはアリだと感じます。
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4. たとう紙の選び方
じゃあどんな、たとう紙を選べばいいんだ!
先程の着物クリーニング・お仕立て専門のブログでは
「通気性のよい和紙のたとう紙」を使う事を推奨しております。
はて、紙に通気性なんかあるのか?
一般的に和紙(日本の伝統的な紙)は洋紙(コピー用紙など)よりも
通気性が良いとされております。
こちらの研究論文も・・・残念ながら見つかりませんでしたが(泣)
もういっそのこと自分で研究しようかな
やはりお着物というニッチな市場に対して、科学の目が向けられる回数は少ないのでしょう。
じゃあ、たとう紙なんかいらないじゃん!という結論に達しそうですが
その意見に、私は断固反対いたします
なぜなら、基本的にたとう紙で保管するメリットとしては
「着物の型崩れやシワの防止」という1点だけを見ても非常に効果があります。
ここには科学の目はないんですけれども、着物は絹という素材でできております。
一般的に絹は摩擦に弱いとされおりますし、なによりお着物自体高いものです。
なので、紙に包む事によって他の素材との摩擦を最小限に抑えることが出来ますし、
紙に包むことで着物をたたんだ時のズレを防ぐ=シワや型崩れの防止にもつながります。
高級なスーツをハンガーにかけて、ビニールをかぶせるのと同じような感覚と思っていただいて結構です。
5. まとめ
ここまで、私の趣味を見て下さったみなさま、誠にありがとうございます。
ふと、たとう紙って本当に言われた通りの役割を果たしているのか?と疑問になって
この記事を作成するに至りました。
ぜひ皆様には、ビニールではなく、伝統的な保管方法でお着物を楽しんでほしいな、とわたくしは思います。
なぜなら、もし着物を包んでいるものがビニールであれば、ある程度雑でもいいや、と感じてしまいますが
紙という素材に触れることで、なんといいますか
「大切に扱おう!」という気持ちが不思議と湧いてきてしまいます。
そういった感情的な意味も含めて
たとう紙での保管をオススメいたします!
きっと着物生活が楽しくなりますよ(^^♪
※もちろん、たとう紙ではなく
「不安だからビニールにして!」というお客様のために、こんな商品がございます
その名もキモノの休息です!
チャックで完全密閉なので虫食いの心配もなし!
密閉されているけど防カビのために色でわかる除湿シートもついております!
着物・襦袢・帯の1セットがまるまる入りますので、お振袖をご購入されたお客様も
これにいれて保管することが可能です。
あ、あれ・・・たとう紙は必要な・・・いことはないです!